07773 司法試験受験生へのタイピング指導を親指シフトからJISかな入力に変更します
No. 07773, by shio / 塩澤一洋
2025-07-30, 2025年7月30日
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2026年から司法試験がCBTに移行するのに伴い、タイピングに関するshio.iconの指導方針を変更します。
CBTとはComputer Based Testing。2025年まで長年続いた手書き試験をやめ、コンピュータでタイピングすることによって論述します。受験生も採点する側も、遥かに楽になります。実現に向けてご尽力いだたいている方々に感謝。
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従来shio.icon は、司法試験受験者に親指シフト(の句読点の配置を英語配列と共通化したshioシフト)の習得を勧めてきました。教え子の弁護士たちからは、親指シフトを習得したことが業務の効率化に大きく貢献していると喜ばれています。文章を書くのが速く、楽になるからです。書くのが速くなると思考も速くなります。
親指シフトとは、すべてのかなを1押鍵で入力できる、かな入力用キー配列です。1980年に富士通のワープロ専用機『OASYS』に採用されて以来、効率的な日本語入力配列として普及してきました。現在、MacでもWindowsでも、無償のアプリをインストールすることによって標準JIS配列キーボードで利用できます(親指シフト専用の特殊なキーボードは不要です)。
その設定手順や設定ファイルなどはこちらに公開しています。
→shioシフト
現在でも、文章をたくさん書く多くの著名人が親指シフトを利用しています。
親指シフト - Wikipediaの中にある「親指シフトユーザーの著名人」参照
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今後は、司法試験受験生たちにJISかな入力を身につけるよう指導いたします。shioシフトは司法試験に合格してから身につければ良い。
JISかな入力は「JIS」(Japanese Industrial Standards, 日本産業規格)で策定されており、原則として日本で売られているすべてのパーソナルコンピュータで利用できます。Mac、Windowsはもとより、iPad、iPhoneに接続した外付けキーボードでも利用可能。司法試験のCBTで試験場に用意されることとなっているWindows PCに付属するキーボードで、ローマ字入力とJISかな入力が利用可能とアナウンスされています。
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日本語入力は「ローマ字入力」より「かな入力」がベター。ローマ字入力の場合、かな1文字を入力するには原則としてキーを2回押下する必要があります。かな入力なら基本的に1押鍵だからです。例えると、ローマ字入力は、階段を幼児のように1段2歩ずつ昇る感覚。かな入力は1段1歩ずつ進む大人の昇り方。後者ができたら前者はもどかしすぎますよね。
かな入力にもいろいろあります。
そのうち親指シフトは、濁音、半濁音、小文字、句読点を含め、すべてのかな文字を1押鍵で入力できます。効率的だし、脳内の日本語をそのままのリズムでタイピングできます。一方、JISかな入力の場合、濁音、半濁音は2押鍵、句読点や小文字には小指シフトキーの併用を要する点が親指シフトより劣りますが、基本的には1文字1押鍵である点、ローマ字入力より相当高効率。
同じ文章を入力するのに要する押鍵回数は概算で、親指シフトを1.0とするとJISかな入力が1.1、ローマ字入力が1.7とされています。ローマ字入力は明らかに非効率です。いずれかのかな入力でタイピングするのが楽。
なお、「打鍵」ではなく「押鍵」です。打ちません。そっと押します。
スタバなどで「打鍵」している人を見かけます。痛い。打ち付けられ続けるキーボードの気持ちになると、痛い。「強打者」と呼んでいます。そういうところにも性格が現れますね。怖い怖い。
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司法試験に向けてMacでJISかな入力を利用するなら、Windowsに合わせた設定にすると良い。
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JISかな入力中に数字を入力する方法
MacとWindows共通
英数入力モードに変更して入力
テンキーで入力
Windows
caps lock+数字キー。caps lockを押している間、数字を入力できます。
これを少々知って驚きました。caps lockなのにロックしないんですね。なんでそういう実装なのか、不思議です。
Mac
option+数字キー。optionを押している間、数字を入力できます。
optionキーを押している間、英字入力モードに移行します。したがって、optionキーとshiftキーを同時に押すと、数字キー(キーボード1段目)の上に刻印されている各種の記号を入力できます。
システム設定→キーボード→入力ソース→編集→「Caps LockキーでABC入力モードと切り替える」をonにすると、caps lockキーでABC入力モードに入って数字を入力できるようになります。もちろん「ロック」キーなので、押して離したらABC入力モード、再度押して離したらかな入力モードに復帰します。
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Windows PCで受験することを考えると、caps lockキーでABC入力モードに入る設定をするのも良いですが、「押しながら」というWindowsの仕様に慣れるならその設定をせずにoptionキーを押しながら数字を入力するのも良いでしょう。
その際、Windows PCのキーボードはMacのcontrolキーの位置にあります。Macではcontrolキーをカーソル操作などに頻用しますし、Cosenseでは段落移動などに頻用しますから、controlキーのまま使いたいですが、もし本当にWindowsに慣れたいのなら、システム設定でcontrolキーをoptionキーに設定しても良いでしょう。その場合、キーボード下段左端にあるcaps lockキーをcontrolキーに割り当てれば、Windowsと同様の配置になります。controlキーがAの左隣にあるのがMacの使いやすさの一つでもあるので、それを捨てるのはshio.icon的にお勧めしませんがお好みで……。
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ちなみにshio.iconの設定はこちら。caps lockを地球儀キーに設定し、絵文字パレットを表示しやすくしています。
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かな漢字変換
2015年からMacでは、「ライブ変換」と呼ばれる自動変換機能によって、かな漢字変換が全自動。文字を入力していくだけでかな漢字混じりの自然な日本語が表記されます。スペイスキーを押すことによる変換、候補選択といった操作がほぼ必要ない。まれに意図しない同音異義語が表記された場合には、注目文節を移動(control+f、b)、伸縮(coltrol+o、i)して変換(returnまたはcontrol+n)すればOK。
iPadも2020年3月25日、iPadOS 13.4のリリースによって、外付けキーボードを接続した場合にライブ変換できるようになりました。
しかしWindowsは依然としてかな漢字変換が手動なのだそうです。司法試験の試験場に用意されるWindows PCでも手動でかな漢字変換操作をする必要があります。
Macを使っている学生たちは、普段は引き続きライブ変換で起案し、受験の2週間前くらいからライブ変換をoffにして、手動変換に慣れると良いと思います。いちいち手動で変換、候補選択を繰り返す非効率を実感することになりますが、いたし方ありませんね。
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10年も前から全自動変換がMacの標準機能として実現している現代において、受験生に手動変換を強要する時代錯誤。
日本はなにごとも、古い方、遅れている方に合わせて、社会全体の進化の足を引っ張る護送船団方式が大好き。なにごとも早め早めに新しいものを取り入れていくことによって、より多くの人が新しいものにトライし、社会全体が前進してゆく。そういう社会でありたい。
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司法試験の採点
答案が手書きからデジタルデータになる最大のメリットは、人間が採点する必要がなくなること。AIが採点すれば採点基準が一律に適用され、複数の採点者が採点する現状よりfairになります。採点結果も翌日には判明することでしょう。
司法試験委員の先生方が貴重な研究時間、業務時間を割く採点業務から解放されます。出題とともに、採点基準をAIに伝える要件として詳細に定義すればOK。試験実施後の業務がほぼゼロになります。
合否判定の公表も遥かに早くなります。
そうすれば、司法試験を年複数回実施することも可能。優秀な人々を司法試験に誘うことにもなるでしょう。
法曹人口を増やしたいという司法制度改革の目的にもかないます。
実は、理事を務めている臨床法学教育学会の研究大会で先日shio.iconは上記の発言をいたしました。
法務省さんはAI利用を計画しているかしら。
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将来
司法試験のCBT化は、未来への大きな一歩です。今後は、Mac、Windows PC、iPad、iPhone、Android端末など各自が使い慣れた端末を試験場に持ち込んで受験できるよう、端末の機種を問わず受験できるwebアプリを開発するのがベストなソリューションだと思います。ブラウザを開ける端末ならどんな端末でもOKにすべき。
それが実現すれば、司法試験だけでなくすべての国家試験、公的試験、大学入試、大学の期末試験、そして初等中等教育の各種試験でそのwebアプリを利用できる。一気に各種試験の電子化が進みます。すべての試験の受験が快適になり、fairになり、採点が迅速になります。
そのような仕組みを作るのが役所の仕事。
各種試験の実施形態が統一され、受けやすくなることで、試験実施コストが下がり、より多くの人が試験にトライしやすくなり、目指す人が増え、国民の知的レベルも上がることでしょう。
税金を使って試験の環境を進化させるのであれば、すべての国民がそのベネフィットを享受できる未来を描き、そこに向けてロードマップを引き、着実に進歩を続けていく司法試験改革であっていただきたい、と切に願っております。
PS:shio.iconもJISかな入力始めました😊
→07793 37年目のJISかな入力
〈写真はSigma BF / Sigma 45mm F2.8 DG | Contemporary〉
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